ウミヒコは以前から、大人たちが冗談を言い合っているときなどに、「恋」という言葉を耳にしていたが、それがどういうことなのか、なんとなく判ってはいた。
しかし、自分のシャガに対する思いこそ恋なのだ、ということに気付かないほど、彼は彼女に夢中になっていた。えてしてそういうものだろう・・・初恋とは。
彼女のことを思っているときが、彼にとって最も幸せなひとときだった。夜も眠れず彼女を思っていると次の日頭がふらふらしていたが、彼はそれを苦痛とは思わなかった。しかし、そんなに好きな彼女に対して、自分の気持ちをどう表現していいのか、彼には判らなかった。
この村の子供なら遊びの最中などに声を掛けるきっかけがあるだろう。しかし、この村の子供たちから仲間外れにされているウミヒコにその術(すべ)は無い。だから、家の手伝いをしたり、村の女たちと浜で貝を採っているシャガの姿を、遠くから見ているしかなかった。