この事件の真相がほぼ解明されると、今度は旅人がお礼として置いていった物の使い道について話し合わねばならなかったが、それは朝餉(あさげ)が済んでからにしようということになり、集まっていた村人たちは、ひとまず解散することにした。

やがて、蝉の鳴く山陰から昇った朝日に照らされると、人気の無くなった浜にまだ人が残っていることが判った。
それは、一人の少女だった。
今朝目覚めた彼女は、自分の枕元に小さな貝殻の首飾りが置かれていることに気付いた。
以前浜でウミヒコがこれを夢中になって作っていたのを思い出した彼女は、急いでこの場に駆け付けたのだが、彼は三人の旅人と共に既に姿を消した後だった。
それを知った彼女は頬に一筋の涙を流し、遠く水平線を見詰めたまま呆然として立ち尽くしているところであった。

少女は、水平線に向かって語り掛けるように呟いた。
「この前あたしが横に座ったとき、あんたは海ばっかり見て、あたしの方なんか見ようともしなかった。話し掛けても、返ってきたのは怒ったような返事だった。だから、あたしはてっきり嫌われてるんだと思い、あんたの言葉が変だなんて、つい心にもないことを言ってしまったのよ・・・。
言葉なんて違ってもいいから、ほんとは、あんたと話しがしたかった・・・。
あたしは・・・」
彼女の目からまた涙がこぼれ落ちた。
「・・・あたしは・・・あんたの傍にいたかった・・・。」
シャガは首飾りを広げ、その美しい貝の一つ一つを指で確かめるようにすると、少し躊躇ってから、それを自分の首に掛けた。
長い黒髪が朝の風にそよぎ、素足の足元で赤い浜茄子の実が微かに揺れた。
「はまなすの実」第一章 終わり